レコードのひみつ その1
昭和39年刊行 小学館 日本百科大辞典より
レコード Record
音盤。レコードということばは記録、または記録したものの意味であるが、音盤のことをさす場合は
グラモフォン=レコード gramophone
record あるいはディスクレコード disc record の略である。
〔歴史〕 1877年11月、エジソンが蓄音機を創案して特許をえた。このときのレコードは、円筒に
錫箔(すずはく)を巻いて音溝(おんこう)をきざんだものであったが、その後、ろうの円筒に改良
された。1887年、この円筒はベルリナーによって平円盤に改良されたが、これは硬質ゴムに真鍮版
の技術を用いて音溝をプレスするものであり、グラモフォンとよばれた。それから約10年の後、シェ
ラック(天然樹脂)を使った音盤が考えられ、1900年にはワックスに原盤をとる方法が考案されて
世界各国にレコード産業がはじまった。1924年の電気吹き込み以前のレコードは声楽がその90%
を占め、管弦楽曲の大曲の全曲録音のはじまりは、1909年のドイツのオデオン社によるチャイコフ
スキーの『くるみ割り人形』であった。わが国では明治40年(1907年)、日本コロンビアの前身である
日米蓄音器製造会社がつくられ、42年(1909年)に邦楽のレコードが発売されたのがはじめである。
当時のレコード(SP盤)には1分間78回転と80回転とがあり10インチ盤と12インチ盤があった。1948年
(昭和23年)には塩化ビニールを原料とするLP盤が、1949年にはドーナツ盤が発明された。これは
溝と溝との間隔をつめた極微溝(マイクログローブ)の方式をとり、回転を33回転3分の1、45回転と
遅くして長時間の演奏を録音できるようにしたもので、レコード技術に大きな進歩を加えた。さらに、
音の強弱によって溝の間隔を調節する技術(バリアブル=グレード
variable
grade)も進歩し、原音に
近い音量差を録音することができるようになり、再生装置の進歩と相まって、ハイファイを楽しむ風潮
が生まれた。そして1957年には立体音を再生できるステレオ=レコード
stereo record
が出現し、その
流行は世界的なものとなりつつある。一方、ハイファイ流行の風潮、再生装置の普及と並行して、時事
的な録音、語学練習、流行歌などを、実用面で安価に楽しめるフォノシート
phono seat
が1960年代に
はいってから急速に流行しはじめ、音のでる雑誌、ソノラマ、ソノブックなどの名で売り出されている。
〔レコードの種類〕
原料別にはシュラック盤とビニール盤がある。ビニール盤は、雑音が少ない、やわらかいが割れにくい、
演奏時間を長くできるなどの特徴を持ち、次第にシュラック盤を駆逐しつつある。録音面から類別すれば、
音溝の片側にだけ音の入った従来のレコードを「モノラール」と呼び、音溝の両側に録音してあるいわゆる
ステレオレコードを「バイノーラル」という。
SP盤 standard
playing 78回転のシェラック盤で、片面の演奏時間は2〜5分。8・10・12インチ盤がある。
LP盤
long
playing 33回転3分の1のビニール盤。7・10・12インチ盤があり、1948年にアメリカのコロンビア
レコード社ではじめて発表された。
ドーナツ盤 1949年、アメリカRCAビクターで発表した、45回転のビニール盤。中心穴がふつう7.3ミリである
のに対して38ミリもあり、ドーナツ形。直径は7インチで、音溝は1インチ(2.54センチ)に220本前後、片面3分
半録音できる。
EP盤
extended playing
45回転。7インチのビニール盤であるが、音溝は1インチ240本以上で、片面7分
以上に演奏時間が延長されている。ドーナツ盤と混同されることが多く、またドーナツ盤を含めて45回転盤
をEPと賞する場合もある。
VG盤
variable grade
SPと同じシェラック盤であるが、音量・強弱によって音溝の間隔をかえるようにくふう
してあり、SP盤の約2倍の長さの演奏を収めることができる。LP盤発表と前後してドイツで発明されたもので、
12インチの片面で約9分。
TS ステレオ=レコードのことで、33回転3分の1(10インチと12インチ盤)と45回転(7インチ盤)の2種がある。
超LP 16回転3分の2のビニール盤。1955年アメリカコロンビア社の発売になるが、あまり一般化しなかった。
1インチあたりの音溝は約550本という極微溝である。
フォノシート ごく薄い塩化ビニールのフィルムに、音溝を高速度にプレスしたもの。1960年にフランスで発売
されたのが最初で、当時は片面だけにプレスし、ふつうのLPの針の重さに耐えられないので、雑誌を台にして
音を出し、これはソノラマ(*)と呼ばれた。のちには多少厚くなり、両面プレスもでている。音質はかならずしも
よくないが、手軽で安価なのが特色である。
〔レコード使用上の注意〕 回転数をまちがえないように演奏することはもちろんであるが、レコードの種類に
あった針を使用することがたいせつである。ピックアップの針先はダイヤモンドとサファイアが使われるが、
ダイヤ針のほうが磨耗度が少ない。高音部の再生が十分でないときは、針先が磨耗していると思って交換
するのがよい。かつてSP盤には鋼鉄針が、LP盤には針圧(ピックアップの針先の目方)の少ない竹針が用い
られたこともある。現在、針圧はLP盤では0.6グラム以下が標準であるが、高度のものでは、ステレオで0.3〜
0.15グラムという軽いものもある。しかし、あまり針圧が少ないとすべって音が飛ぶこともある。
塩化ビニール盤には静電気が起こりやすいので、ほこりを吸着するのが難点である。クリーナーも種種市販
されているが、よく洗ってかたくしぼったガーゼなどで水ふきするのが効果がある。ただし、このさいぬれたま
ま針をのせないこと。レコードの保存は、なるべく垂直に、本棚に本を並べるように立てておくのがよい。
〔レコードの製造工程〕
テープ再生器でラッカーマスターに音溝を切りこみ、それに銅の電鋳をほどこす。
これをはがしたものが凸版のマスターで(これが原盤となる)これから凹版のマザーを作る。ここでよく
試聴してから、これにまた電鋳をほどこして凸版を作り、それにクロムメッキをしてスタンパーができ、
これをビスケットにプレスし、レコードは完成する。
レコードプレイヤー Record
Player
電蓄の一部で、円盤レコードをのせて回転するターンテーブル(フォノ
モーター)と、盤から音を電気的にとりだすピックアップ(*)を組み合わせて、一つのケースに収めたもの。
プレイヤーだけで市販されているものがあり、ラジオ受信機のPU端子に接続すれば簡単な電蓄となる。
ソノラマ Sonorama
フランスのソノプレス社が発明し、1958年秋に創刊した「音の出る雑誌」。塩化
ビニールでつくった薄くて柔軟なレコード(ソノシート)を、そのままふつうのLPプレーヤーにかけると、
文字を読みながら作者の声が聞けたり、絵や写真をながめながら歌や音楽が聞ける。ビニール
レコードは手軽に扱えて保存もきくし、プレーヤーで1000回ぐらい使用可能で、また大量生産で安価に
できるなどの特色がある。
わが国にもソノラマの技術や機械が輸入され、昭和34年(1959年)に「朝日ソノラマ」が創刊されたのと
前後して、「KODAMA」「AAA」などがつぎつぎに発刊され、ひじょうな評判をよんだ。
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